今回はトーンコントロール無しで、ボリウムとバランスコントロールとセレクターだけの、CR型RIAAイコライザープリアンプを作りますが、その際ヘッドエンドとなる「初段管」を重要なキーワードと捉え、S/Nとダイナミックレンジに有利であろう6AU6による高圧ドライバーの技術を応用します。

出力電圧5mVの一般的カートリッジでも、20kHzでは50mV出るわけです。もし平均レベルの10倍、つまり0,5Vくらい入って来た場合、CRイコライザーのヘッドエンドは大変です。

例えば170倍のゲインを持ったヘッドエンドでは、それによって発生する80V(P-P:220V)の出力をクリア出来るダイナミックレンジを持たせる必要があります。

つまり、このあたりの信号電圧レベルから、トランジスタでは追随しにくい、まさに真空管ならではの世界へと入り込んで行くわけです。


      


初段150倍の6AU6を通過後、まず中域以上のみを低下させ、ゲインが10倍程度の2段目に入ります。

ここは初段ほどでは無いにしろダイナミックレンジがあり、300Vp-pをこなす出力電圧を出せ、かつ高域低下用EQ素子とのアイソレートを行う役割があるので、電流帰還を持たせた6AU6の3結としました。

このように、このプリアンプでは、2段目で2種類のEQ素子を隔離させているため、EQ素子相互の影響が無く、それぞれ単純な計算値通りの素子設定が出来ます。

最後はチョークフォロワのバッファによる低いインピーダンスをもって極力低い値のボリュームを通過後、マルチチャンネルに送り出す計画です。

0,5mVからの小信号を扱うプリアンプながら、CR型イコライザーのS/Nをマジで良くしようとすると、初段管や次段管に強力なダイナミックレンジを持たせる設計を行わないと、最後に高域低下を行いS/Nを上げることが出来ないのです。


  


そこで多くのCR型EQはS/Nの悪化を尻目に、初段管の入り口で高域の低下を行ったり、増幅率の低い初段管(トランジスタなら初段ユニット)を使ったりして、なんとか体裁を整えることで今日に至り、これがCR型EQの音とされてきました。

例えば±30Vくらいの供給電圧で設計したDCプリアンプなら、実質スイング幅25VとしてもRMSで17Vですから、0,5Vの入力に対しては35倍がヘッドアンプのゲインの限界になってしまいます。

そしてこればかりの増幅率のため、何個ものトランジスタが差動だのカレントミラーだのとへばり付いて動き回り、結局ドリフト防止のコンデンサーを通過後、やっと出力電圧が出されるわけです。

下の図がそうした過去のやり方と決別するため設計した回路で、参考までに図の下部に帯域別平均的信号レベルおよび高域のピークレベル(RMS)を表記してあります。





バッファ回路は10Vを1kΩ以下の出力インピーダンスで送り出せる能力がある球と、バイアス電圧=(動作電流)×(チョークの直流抵抗)の組み合わせに対応するチョークコイルを見つける必要があります。

今回は図のように東栄変成器のチョークを使う予定ですが、バッファ用の球に小型のパワー管を起用してしまうと、いきなり使用電力が増え、PTのリーケージフラックスが増大してしまいます。

この事はプリアンプ本体によるカートリッジへの影響や、、MCカートリッジ用トランスの設置範囲に不利ということで、6AU6を起用しました。

まずヘッドエンド単体の性能実験を行なった結果、定格の10倍である10KHz、500mV入力時、出力電圧72Vにおいて歪率が8%にまで及ぶものの、顕著な波形のクリップは起きません。

この懐の深さが今回製作するプリアンプの「キモ」であり、高電圧を得意とする真空管ならではの「売り」となっています。

いくら微小入力で低歪を誇っても、大入力時クリップしてはいけません。なにしろこの部分は、入力レベルの調整が出来ないのですから。


        

    

    


2段目の6AU6(t)はゲインが15倍ほどで、7V入力時、出力電圧は110V(300V P-P)が4%のj歪で取り出せ、実際はヘッドエンドとの歪打消しでさらに低歪となるでしょう。f特は60KHzで−0,5dB、80KHzで−2dBとなっています。


    

    

    


バッファ段の6AU6(t)チョークフォロワはゲイン1倍弱で発振器の最大出力7Vまで0,4%の歪です。出力インピーダンスは200Ωとなり、16Ωのスピーカーを直接つないでも結構な音量で鳴ってくれます。

周波数特性は200KHzあたりでもフラットで、500KHzの矩形波も写真の通りです。


      

    


これで製作に入る準備が出来ました。依頼者には入院などで昨年より相当待っていただいているため、早急に製作に取り掛かりたいと思います。ただし待っていただいた間に2πファンなど新しい機構も出てきました


つづく









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by6AU6
真空管ならではのスーパーヘッドエンドを設計せよ!
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